ふれっしゅらいふ、その後のハナシ。
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    谷川俊太郎

    また朝が来てぼくは生きていた 
    夜の間の夢をすっかり忘れてぼくは見た
    柿の木の裸の枝が風にゆれ
    首輪のない犬が日だまりに寝そべっているのを

    百年前ぼくはここにいなかった
    百年後ぼくはここにいないだろう
    あたり前なところのようでいて
    地上はきっと思いがけない場所なんだ

    いつだったか子宮の中で
    ぼくは小さな小さな卵だった
    それから小さな小さな魚になって
    それから小さな小さな鳥になって

    それからやっとぼくは人間になった
    十ヶ月を何千億年もかかって生きて
    そんなこともぼくら復習しなきゃ
    今まで予習ばっかりしすぎたから

    今朝一滴の水のすきとおった冷たさが
    ぼくに人間とは何かを教える
    魚たちと鳥たちとそして
    ぼくを殺すかもしれぬけものとすら
    その水をわかちあいたい

     
    11:19 日々のこと comments(0)
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